建設業許可取得後の義務について
目次
建設業許可は、取得することにより工事受注金額の上限がなくなります。
また、元請からの仕事が受注しやすくなる効果もある為、売上拡大が見込めます。
公共工事の入札に参加する為にも建設業許可は必要です。
このように建設業許可には様々なメリットがありますが、その反面、許可取得後には様々な義務を
負うこととなります。
建設業は国民生活の基盤となるものなので、義務を履行しなかった場合には処罰の対象となります。
今回は建設業許可を取得した後に負うこととなる義務について解説いたします。
建設業法上の主な義務
建設業許可を取得すると以下の義務が発生します。
- 許可行政庁への届出義務
- 標識の掲示義務
- 帳簿の備付・保存義務
- 契約締結に関する義務
- 工事現場における施工体制等に関する義務
- 下請代金の支払いに関する義務
違反した場合には許可の取り消しや営業停止など厳しい処分の対象となります。
また、この処分内容は公表される為、社会的信用も失うことになります。
建設業許可は決められた義務・ルールを守っているからこそ社会的信用や利益を得られる資格である
ことを認識し、義務は必ず守るようにしてください。
続いて、それぞれの義務について確認していきましょう。
行政庁への届出義務
建設業許可を取得した後、経営業務管理責任者の変更などの許可に関する変更があった場合には、
規定の様式で許可を受けた役所に報告をしなければなりません。
毎年事業年度終了後4ヶ月以内に決算変更届(事業年度終了届)をその年度の決算報告として提出する
必要があります。
これら2つの届はつい忘れがちですので気を付けるようにしてください。
許可票(標識)の掲示義務
建設業許可業者は、その営業所と建設工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、標識を
掲げなければなりません。
工事現場で「建設業の許可証」と書かれている看板を目にすることがあるかもしれませんが、
これは建設業の許可を受けた業者によって建設工事が適正になされていることを明らかにする
ためのものです。
同様に営業所にも許可証を掲示する必要があります。
この許可票は役所からもらえるものではありませんので、許可業者が自ら購入することになります。
記載事項や寸法は定められたものでなければなりませんが、最近ではネット通販で簡単に購入する
こともできます。
許可の更新申請時には、店舗に掲げた「建設業許可標識」の写真を添付する必要があります。
許可票の記載事項
- 一般建設業または特定建設業の別
- 許可年月日、許可番号、許可を受けた建設業
- 商号または名称
- 代表者の氏名
- 主任技術者または監理技術者の氏名(建設工事現場に掲示する許可票のみ)
許可票の寸法
営業所に掲示する許可票:縦35cm以上×横40cm以上
建設工事現場に掲示する許可票:縦40cm以上×横40cm以上
許可票は元請や下請、公共工事や民間工事の区別なく掲示する必要があります。
材質に関しての規定はないため、素材や色は何でも問題ありません。
特に営業所に掲示する許可票は業者さんによってはこだわりを持って許可票を
作られていたりします。
帳簿の備付と保存義務
建設業許可業者は、適正な経営を行っていく上で、請負契約に関する事項を記載した帳簿を営業所
ごとに備え付け、5年間保存しなければなりません。(住宅新築工事については10年間保存)
帳簿の様式は自由ですが、営業所の代表者の氏名、請負契約に関する事項など記載しておかなければ
ならない内容が規定されています。
記載内容や添付書類は細かく定められている為、しっかりと把握しておいてください。
契約締結に関する義務
建設工事では、請負契約の当事者間の力関係が一方的であることにより、契約条件が
一方にだけ有利に定められ、請負人の利害を害することがしばしば見受けられました。
その為、発注者と受注者間の請負契約の締結に関し、適正な契約を締結することが
義務付けられています。
請負契約は原則として工事の着工前に行わなければならず、(着工前書面契約)、請負契約書には定め
られた事項を記載しなければならない(契約書面への記載必須事項の規定)など、様々な規定があります。
また、発注者としての有利な立場を利用し、不当に安く契約したり、工事に使用する資材を
請負人に購入させるといった適正な契約とは言えない行為も禁止されています。
さらに、建設業法では請負契約は書面で行うことが義務づけられています。
慣習や面倒との理由で口頭で済ませている場合、建設業法に違反する行為だと認識し、
契約書を取り交わすようにしてください。
工事現場の施工体制等に関する義務
①工事現場への技術者の適正な配置義務
建設業許可業者は、元請下請の区別なく工事施工の技術上の管理をつかさどる者として、
工事現場には「主任技術者」を配置しなければなりません。
特定建設業者であれば主任技術者の代わりに、「監理技術者」を置く必要があります。
また、請負代金が2,500万円(建築一式工事の場合は5,000万円)以上の場合、主任技術者や
監理技術者は、他の工事現場との兼務することはできません(その工事現場専任)ので、
注意してください。
②一括下請負の禁止
自らが請け負った建設工事を、一括して他人に請け負わせることを「一括下請負」と言い、
禁止されています。
③特定建設業者に対する義務
特定建設業者が発注者から直接請け負う元請となって、4,000万円(建築一式工事の場合は
6,000万円)以上を下請に出すときは、、施工体制台帳や施工体系図の作成が義務づけられます。
また、工事に係る全ての下請業者に対し法令遵守を指導する必要があります。
下請代金の支払いに関する義務
下請負人の利益を守ることを目的として、下請代金の支払いに関する規定が設けられています。
①下請代金は1ヶ月以内に支払わなければならない。
元請負人は注文者から請負代金の支払い(出来高払い又は竣工払い)を受けた日から1ヶ月
以内に工事を施工した下請負人に対して、下請代金を支払わなければなりません。
※1ヶ月以内であればいつでも良いのではなく、出来る限り早く支払われなければなりません。
②下請代金の支払いはできる限り現金払いとしなければならない。
手形で支払う場合であっても、手形期間は120日以内のできるだけ短い期間を設定することが
望まれています。
③特定建設業者は下請負人からの引渡し申出日から起算して50日以内に下請代金を
支払わなければならない。
特定建設業者は一般建設業者とは別に規定が設けられており、「注文者から支払いを受けたか
どうかにかかわらず」工事完成の確認後、下請負人から引渡しの申出があったときは、申出の
日から50日以内に下請代金を支払わなければなりません。
従って、特定建設業者は、「注文者から請負代金の支払いを受けた日から1ヶ月以内」か
「引渡しの申出から50日以内」のいずれか早い方が支払日となります。
まとめ
以上が、建設業許可業者が負う義務の全てです。
建設業許可は非常に有用な資格ではありますが、社会的責任を伴うもので有るため、それ相応の
義務を負うこととなります。
しっかりと把握しておかないと知らず知らずのうちに違反してしまうことも考えられます。
もし、建設業許可における義務についてご不安があれば、お近くの行政書士にご相談されることを
オススメいたします。
当事務所でも建設業許可に関するお問い合わせを承っております。
初回相談は無料となっておりますので、是非一度ご相談ください。