建設業許可の要件:財産的基礎とは?
目次
財産的基礎とは?
建設業許可を取得する際に必要な要件の1つに「財産的基礎」というものがあります。
これは、請負契約を履行する為に必要な財産的基礎または金銭的信用を有していることを求めるものです。
つまり、ある程度の金融財産が無ければ建設業許可は取得できないということです。
今回はこの「財産的基礎」について解説いたします。
財産的基礎とは?
財産的基礎とは「建設業者が事業を継続させるための財務基盤」のことです。
建設業許可を取得した建設業者は、請負金額が多額となる工事の施工が可能になります。
契約を締結したにも係わらず、資金不足や資金繰りの悪化により、着工や完成ができなくなったり倒産するような
ことがあっては多方面の多大な影響を与えてしまいます。
その為、建設業許可を取得する建設業者には、安定した財務基盤が求められます。
(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。第二十六条の七第一項第二号ロにおいて同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。同号ロにおいて同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。同号ロにおいて同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
三 法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
四 請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。
建設業法/e-Gov法令検索
このように建設業法では建設業許可取得時の要件として「財産的基礎」を求めています。
また、この「財産的基礎」は一般建設業と特定建設業では基準が違っています。
一般建設業許可に求められる財産的基礎
一般建設業許可では次の3つのうち、どれかにあてはまる事が求められます。
① 自己資本の額が500万円以上である
② 500万円以上の資金を調達する能力がある
③ 過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある(更新の場合のみ)
令和4年12月28日 国不建第463号 国土交通省 建設業許可事務ガイドラインについて
以下、①から③について、個別に説明します。
①自己資本が500万円以上あること
自己資本とは、自力で調達した、返済義務がないお金のことです。
建設業者が、決算時または創業時(新規設立の場合)の自己資本が500万円以上あることが必要です。
この自己資本の計算方法は法人の場合と、個人の場合で異なります。
法人の場合
貸借対照表「純資産の部」の合計額
資本金や利益剰余金(税引後の利益)などが記載されている欄の合計額です。
個人の場合
期首資本金、事業主借勘定、事業主利益の合計額から、事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている
利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額
(期首資本金+事業主借勘定+事業主利益)― 事業主貸勘定 +(利益留保性の引当金+準備金)
(3)「自己資本」とは、法人にあっては貸借対照表における純資産合計の額を、個人にあっては
建設業許可事務ガイドライン
期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債
の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいう。
自己資本が500万円以上あることの証明は、決算時に作成した貸借対照表の提示、
新規設立の場合は、設立時の貸借対照表の提示により行います。
② 500万円以上の資金を調達する能力がある
資金調達能力については、預金残高や融資証明書により証明します。
預金残高で証明する場合は口座に、500万円以上の預金残高があることが必要です。
また、500万円以上の融資証明書の提出でも証明が可能です。
なお、証明書の日付は、許可申請の受付日から1か月以内である必要があるので注意してください。
③過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある(更新の場合のみ)
建設業許可は5年ごとに許可が必要です。
建設業許可業者として5年間継続して営業を行ってきた実績がある場合は、財産的基礎の証明を省略することができます。
特定建設業許可に求められる財産的基礎
特定建設業の許可では法人の場合と個人の場合でそれぞれ要件は次の通りです。
この基準を満たしているかどうかの判断は、直前の決算期における財務諸表により、新規設立の企業の場合は創業時の
財務諸表により行います。
特定建設業許可は、一般建設業許可に比べ、「財産的基礎」の基準が厳しくなっています。
特定建設業者は元請業者として大規模な工事を請け負い、多くの下請け業者を抱える事となります。
その為、より資金力も必要となること、下請け業者保護の観点からより厳しい基準となっています。
細かな計算方法は法人の場合と、個人の場合で異なります。
法人の場合
次の①から④までの全てにあてはまることが必要です。
① 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
繰越利益剰余金の負の額 ―(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く))÷資本金×100≦20%
② 流動比率が75%以上であること。
流動資産合計 ÷ 流動負債合計×100≧75%
③ 資本金の額が2,000万円以上であること。
資本金≧2,000万円
④ 自己資本の額が4,000万円以上であること。
純資産合計≧4,000万円
個人の場合
次の①から④までの全ての事項にあてはまることが必要です。
① 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
事業主損失 ―(事業主借勘定 ― 事業主貸勘定 + 利益留保性の引当金 + 準備金)÷ 期首資本金×100≦20%
② 流動比率が75%以上であること。
流動資産合計÷流動負債合計×100≧75%
③ 資本金の額が2,000万円以上であること。
期首資本金≧2,000万円
④ 自己資本の額が4,000万円以上であること。
(期首資本金 + 事業主借勘定 + 事業主利益)- 事業主貸勘定 + 利益留保性の引当金 + 準備金≧4,000万円
注意点
財産的基礎の証明には、財務諸表や預金残高証明書が必要になります。
特に財務諸表は、 決算時に作成したものを元に所定の計算方法によって再計算し、その計数を申請用の
様式に転記する必要があります。
最後に
いかがだったでしょうか?
今回は建設業許可の要件の1つ、「財産的基礎」について解説いたしました。
財産的基礎は特に一般建設業許可を取得するうえで難しい要件ではありませんが、その証明にはポイントがあり、
手間もかかります。
許可取得時に少しでもご不安がある場合はお近くの行政書士にご依頼されることをお勧めいたします。
当事務所でも建設業許可申請を承っておりますので、お気軽にご相談ください。
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